ESGライブラリ

気候変動

気候変動はグローバルな視点で取り組むべき重大な社会課題であり、脱炭素社会の実現に向けた動きが拡大しています。

当社はこれまで温室効果ガス(GHG)の排出削減に向けた取り組みや、GHGの排出削減に寄与する製品・サービスの拡充による新たな事業機会の創出に努めてきました。この取り組みをさらに推進するため、2021年8月、DOWAグループの気候変動対応方針を定めました。本方針に基づき、当社グループは2050年のカーボンニュートラルを目指して、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを推進しています。

TCFD提言を活用した気候変動対応

DOWAグループは、気候変動に対する取り組みをさらに加速するため、2021年からシナリオ分析を開始し、2022年2月、取締役会の決議を経て気候関連財務情報開示タスクフォース(以下、TCFD)の提言に賛同しました。

ガバナンス

DOWAグループでは、気候変動対応をはじめとするサステナビリティ活動を強化するため、代表取締役社長を議長とする「サステナビリティ推進会議」と、その傘下に経営企画担当役員を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置しています。

サステナビリティ推進会議では、気候変動対策などのサステナビリティに関する重要な方針や施策およびその進捗などについて審議を行います。重要な事項については取締役会へ報告し、監督を受けます。

サステナビリティ委員会では、気候変動対応を重要テーマの一つとし、当社グループの気候変動の対応状況のモニタリングを行います。また、グループ横断的な視点から気候変動に起因するリスク・機会の特定・評価を行い、取り組み方針や目標、対応策を検討・立案し、重要なリスク・機会とともに、サステナビリティ推進会議に報告します。

気候変動への対応を具体的に推進する組織としては、サステナビリティ委員会の分科会として事業会社や技術部門などの実務者を主体とする「気候変動対応ワーキンググループ」を設置し、GHG排出削減計画やモニタリングの仕組みづくりなどの取り組みを推進しています。

ガバナンス

戦略

2021年度は、DOWAグループのGHG総排出量の95%以上を占める国内事業を対象にシナリオ分析を行い、気候変動に起因するビジネス上のリスクおよび機会について整理しました。

シナリオ分析に際しては、将来に対する予測は不確実性が高く分析が難しいことから、下記の通り1.5℃~4℃までの複数のシナリオを参照して検討を行いました。

参照したシナリオ

機会とリスク

中長期の時間軸において特に当社の事業に影響が大きいと考えられるリスクおよび機会を抽出し、短・中・長期における影響の発現時期とその度合いを下記の通り整理しました。

機会とリスク
特に注目すべき市場

気候変動によるDOWAグループへの影響を幅広く整理し、当社の主要事業へのかかわりが深く特に影響が大きいと考えられる自動車市場について検討を行いました。

今後のEV化の拡大による自動車市場の変化についてバリューチェーンの視点から分析し、下記の通り当社事業の機会とリスクについて整理を行いました。

自動車バリューチェーンと当社事業

リスクマネジメント

DOWAグループでは、経営に重大な影響を及ぼす危機を未然に防止し、万一発生した場合の被害を極小化するために、リスクマネジメントの高度化に努めています。気候変動関連のリスクのように経営に大きな影響を及ぼすサステナビリティに関する案件については、グループ全体が参画する「サステナビリティ委員会」でリスク等の評価を行い、ビジネスリスクの観点から特に重要度の高い案件を「サステナビリティ推進会議」で審議する仕組みとしています。

評価・特定された気候変動関連のリスク・機会については、サステナビリティ推進会議において重要と判断された場合、「DOWAホールディングス取締役会」への報告を行います。

DOWAホールディングス取締役会では、気候変動対応を含むグループ全体のサステナビリティに関わる全社方針や目標、その管理や実行する組織について監督を行います。

リスクマネジメント

目標

DOWAグループは、2050年までにカーボンニュートラルを目指すとともに、その通過点として、2030年度までの中間目標を下記の通り設定しています。なお、GHGの排出・削減状況については引き続きモニタリングを実施し、脱炭素に向けた国内外の政策動向や社会経済情勢等を考慮のうえ、必要と判断した場合には目標の見直しを行うことがあります。

長期目標

DOWAグループは、2050年までにカーボンニュートラルの達成を目指します。

中間目標

2030年度の温室効果ガス(GHG)削減目標

当社グループは、日本国内で排出するスコープ1および2(*1)GHG排出量を、2030年度に2013年度比で以下の通り、削減することを目指します。
なお、本目標は、日本政府が掲げる「2030年度において温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指す」ために策定された『地球温暖化対策計画』(*2)の区分ごとの目標に準じています。

気候変動対策委検討委員会

※本目標には、クレジット等の活用によるオフセットを含みます

  • 海外事業所のGHG排出量については本目標の対象としていませんが、今後、モニタリングを進めながら目標の検討を進めて行きます
  • スコープ3(*1)のGHG排出量は、実態把握の上で、今後目標への取り入れについて検討を進めて行きます
  • GHGの排出・削減状況については引き続きモニタリングを実施し、脱炭素に向けた国内外の政策動向や社会経済情勢等を考慮の上、必要と判断した場合には目標の見直しを行うことがあります

(*1)スコープ1、2、3とは、GHGプロトコルが定める、事業者のGHG排出量算定報告基準における概念であり、以下を指す。
・スコープ1:当社自らの直接排出
・スコープ2:他社から供給された電気・熱などの使用に伴う間接排出
・スコープ3:スコープ1・2以外の間接排出(=当社の活動に関連する他社の排出)

(*2)地球温暖化対策推進法に基づく政府の総合計画(令和3年10月22日閣議決定)

サプライチェーンのGHG排出量(スコープ3*1)は、今後実態把握のうえで、目標への取り入れについて検討を行います。海外事業所のGHG排出削減目標については、立地国の状況の把握やモニタリングを進めながら、目標設定の検討を行います。

その他詳細につきましては、「TCFDレポート」をご参照ください。

CO2の排出

当社グループの温室効果ガスの排出量は、電力起源と廃棄物起源が多く、全体の約8割を占めていることが特徴です。特にCO2排出量の変動は、外部から受け入れる廃棄物の焼却による影響が大きく、廃棄物の量や組成によって変化します。外部で発生する廃棄物をコントロールすることは困難なため、焼却時に発生する熱を発電や蒸気として利用するサーマルリサイクルを進めることで、地球温暖化防止に取り組んでいます。また、製造事業所では、エネルギー効率の高い設備への切り替えや適切な運転管理によるエネルギー消費量の削減によってCO2排出量の削減に努めています。

目標達成に向けた取り組み

当社グループは、中長期の目標達成に向け、引き続きプロセス改善による省エネルギー推進、燃料転換、再生可能エネルギーの活用等を通じてGHG排出量削減を進めていきます。また、これらの気候変動に対する取り組み状況については、統合報告書やホームページを通じて定期的な情報開示を実施します。

中期計画2024における気候変動対策

2022年度からスタートした「中期計画2024」は、経済的価値と社会的価値の向上の両立を目指しています。

気候変動対策においては、「気候変動対応方針」に則り、5つの重点施策を掲げています。TCFDによるリスクと機会の分析をもとに、資源循環と脱炭素を両立するサステナブルなビジネスモデルの構築など、当社の事業特性を活かした気候変動対策に取り組みます。

重点施策 取り組み
市場環境に応じたビジネスの創出
  • グローバル資源循環の強化
  • 資源循環と脱炭素を両立するサステナブルなビジネスモデルの構築
  • 市場ニーズを捉えた脱炭素に貢献する製品・サービスの提供
モニタリング体制の強化
  • 温室効果ガス(GHG)排出量集計の効率化
  • システムを利用したGHG排出量の社内共有とフィードバックの実施
  • サプライチェーンGHG排出量(スコープ3)集計の仕組みづくり
気候変動対応の全社活動
  • 気候変動にかかる全社取り組みの推進継続、気候変動対応ワーキンググループの立ち上げ
  • 社内勉強会・情報提供
事業継続計画(BCP)の見直し
  • 物理的リスクである気象災害への防災強化と既存BCPへの気象災害の取り入れ
  • サプライチェーン上の気象災害対応の検討
情報開示の強化
  • TCFD提言のフレームワークに基づく情報開示の推進
  • 統合報告書や当社ホームページを活用した定期的な情報発信
気候変動問題解決に向けた当社のアプローチ

自然エネルギー等の活用

水力発電

当社では、再生可能エネルギーによる自家発電の活用と、事業を通じた再生可能エネルギーの普及を通じて、地球温暖化対策に取り組んでいます。

小坂製錬(秋田県)では、1897年、鉱山開発に利用するため国内で2番目となる水力発電所の運転を開始しました。その後も事業拡大に伴い設備の増設と整備を設け、現在は秋田県内6か所の水力発電所を保有しています。

太陽光発電

DOWAサーモエンジニアリング太田工場(群馬県)、メルテック(栃木県)、DOWAハイテック(埼玉県)、エコシステム山陽(岡山県)、アクトビーリサイクリング(熊本県)の事業所では、太陽光発電システムを導入しています。

廃熱発電

DOWAグループでは、国内5か所、海外1か所の6事業所で廃熱発電を行っています。

廃熱発電は、廃棄物を焼却する際の熱や炉の排熱など大気中に廃棄される熱を利用した発電方法で、高温高圧の蒸気を作り、タービンを回して発電します。廃棄物による発電は、燃料として可燃ごみを利用するため、通常の火力発電のように化石燃料を必要とせず、廃棄物からエネルギーを創出することができるため、エネルギーの有効利用につながっています。

研究開発

産学連携の取り組み「共創研究所」

2022年4月、当社は国立大学法人東北大学と研究活動の推進強化を図るため、「DOWA×東北大学 共創研究所」を設置しました。東北大学の高い技術シーズとDOWAの保有技術をより深く融合させ、カーボンニュートラルをはじめとするサステナビリティに関する課題に対応しつつ、資源循環と優れた素材・技術の提供に貢献する先端技術を創生することを目指しています。

第一期となる2022~2024年度は、下記の研究テーマの探索を行い、共同研究プロジェクトの立ち上げを目指します

1 カーボンニュートラル技術
2 AI/IoT/MIによる革新的技術
3 自動車(EV)、情報通信、環境・エネルギー、医療・ヘルスケア向けの新材料
バイオコークス

当社の製錬や溶融事業で使用するコークスや石炭などの代替燃料として、植物を原料として製造する固形燃料「バイオコークス」の研究を進めています。2021年度は様々な植物由来の原料を用いて燃焼試験を実施し、評価を行いました。今後は予備試験、実証試験を行い、実際の製造に向けた開発を推進します。

バイオコークス

気候変動適応策の取り組み

当社は気候変動問題への対応として、再エネや省エネなどの温室効果ガス排出量を削減する「緩和策」を推進すると同時に、災害対応や熱中症対策など「適応策」の面でも対応を進めています。

熱中症対策
  • 建物の遮熱対策の導入
  • スポットクーラーの設置
  • WBGT値による計測と作業管理
気象災害
  • 気象災害による浸水を想定した排水ポンプの増強
  • 工場やサプライチェーンへの自然災害の影響を軽減するためのBCPの見直し
  • 全社防災訓練の実施等

外部団体での取り組み

日本鉱業協会

当社は、日本鉱業協会の会員企業です。日本鉱業協会では、「2050年カーボンニュートラル実現に向けた非鉄金属業界の取り組みについて」を公表しており、当社は会員企業各社と情報共有し、協働で取組みを推進しています。このように当社の考え方や方向性に一致する業界団体と共に気候変動対応を推進していますが、日本鉱業協会の気候変動に関する委員会や部会に参加し、当社の考え方や方向性と乖離がある場合は議論を重ねて対応していきます。

※日本鉱業協会の「2050年カーボンニュートラル実現に向けた非鉄金属業界の取り組みについて」の詳細は、以下をご参照ください。

トピックス

食品廃棄物を原料とするバイオガス発電事業を開始

食品廃棄物の発生抑制や有効利用は、持続可能な社会を構築するため、重要な課題の一つです。DOWAグループのバイオディーゼル岡山は、2021年4月、食品関連事業者から発生する調理くずや廃棄食品を原料とするバイオガス発電を開始しました。年間約1.6万tの食品廃棄物を受け入れ、約1,600世帯の年間電力使用量に相当する発電を行う、中国地方5県では初となる商業的な大規模施設です。発電所には包装容器等を取り除く前処理設備を設け、飼料や肥料にリサイクルすることが難しい状態の食品廃棄物を再生可能エネルギー源として活用しています。

バイオディーゼル岡山

バイオディーゼル岡山