ESGライブラリ

リスクマネジメント

基本的な考え方

当社グループは、経営に重大な影響を及ぼす危機を未然に防止し、万一発生した場合の被害を極小化するため、リスクマネジメントの高度化に取り組んでいます。また、各事業活動における顕在的・潜在的リスクの洗い出し、対応策の実施、レビュー、監査という一連のリスクマネジメントフローの強化・充実を進めています。

推進体制

当社グループは、3つのディフェンスラインをモデルとした内部統制上の「Ⅳ線ディフェンス体制」を基軸とするリスクマネジメント体制を構築しています。生産等の操業を担う事業子会社(第Ⅰ線)およびそれらを統括する事業会社(第Ⅱ線)が定期的なリスク評価を含むリスクマネジメントサイクルを展開し、持株会社であるHD各部(第Ⅲ線)が必要な指示・監督・サポートを行います。また、HD監査部(第Ⅳ線)が内部監査を行うことで、これらの有効性を評価しています。なお、リスクマネジメント体制は経営企画担当役員を議長とするサステナビリティ委員会にて運営しており、監査役会から分離されています。

リスクマネジメント体制図
リスクマネジメント体制図

リスクの定義・評価

当社グループは、リスクを「経済リスク」「戦略リスク」「オペレーションリスク」「ハザードリスク」の4つを大区分とし、それぞれにリスクシナリオ詳細を設け、COSOおよびJISQ2001を参照した統合的なリスクマネジメントを図っています。経営戦略会議および経営執行会議にて、「戦略リスク」を中心に事業リスク全般のモニタリングを行い、さらに「経済リスク」「オペレーションリスク」「ハザードリスク」については、サステナビリティ推進会議にて、リスク等の評価・特定を行い、対応策の検討・審議を行っています。また、各会議の審議に基づいて重要とされた事項については、取締役会へ報告し、監督を受けています。

2022年度は各拠点において、本リスク定義に沿った形で、事業推進への影響が想定されるリスクの識別・評価を行いました。また、重点リスクについては、対応を2023年度予算に織り込みました。

当社グループのリスク分類と各会議における検討内容
当社グループのリスク分類と各会議における検討内容
DOWAグループの経営成績、株価および財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスク

リスクの区分 リスクの内容 具体的なリスク リスクへの対応
戦略リスク 市場変動に関わるリスク
  • 主要な用途市場および需要地における景気が悪化する
  • 産業構造の変化およびそれに伴って需要が減少する
  • 市場リスクや事業構造変化に関わるリスクが異なる複数の事業で構成される独自の事業ポートフォリオを構築し、グループ全体としてリスクを分散し業績安定性を確保
気候変動に関わるリスク
  • 気象災害による工場の操業停止や設備管理コストの増加
  • 事業活動を行う地域におけるカーボンプライシング(炭素税等)の導入
  • 気候変動に関する情報開示の制度化による投資環境の変化
  • 当社グループの気候変動対応方針および2050年までにカーボンニュートラルを目指すという長期目標を制定
  • 2030年度の中間目標として温室効果ガス削減の数値目標を設定
  • 当社グループが賛同を表明しているTCFD提言に基づく情報開示や対応策の検討
  • 主要な製造工場における省エネ型設備への更新やエネルギー転換を推進
  • 取締役会を頂点とした気候変動問題をはじめとするサステナビリティ課題を審議する体制の構築
経済リスク 相場変動に関わるリスク
  • 非鉄金属の価格の下落や円高の進展が長期継続する
  • 非鉄金属先渡取引や為替予約取引等のデリバティブ取引の活用により、金属価格変動リスク、為替変動リスクを回避・軽減
オペレーションリスク 操業に関わるリスク
  • 自然災害、停電、事故、感染症の蔓延等が発生し、製造工場の生産能力が著しく低下する
  • 自然災害、緊急事態に備えたBCP(事業継続計画)の整備
  • 事故等の未然防止に向けた設備設計に関する標準ルールの作成
  • 安全指導と設備点検の徹底、安全や操業等に関する情報が共有される体制の整備
環境保全に関わるリスク
  • 環境汚染が発生する
  • 国内外の主要な事業所における環境管理システムの構築
  • 環境関連法令の規制値より、さらに厳しい社内基準値を用いたモニタリング
  • 休廃止鉱山および関連施設等の巡回点検による安定的な状態の維持
  • 坑廃水等による環境汚染や陥没・山崩れ等の鉱害の防止
品質管理に関わるリスク
  • 重大な品質不良や品質異常が発生する
  • 主要製造工場における国際規格ISO9001の認証取得
  • 日本鉱業協会等の制定する品質保証に係るガイドラインの遵守
  • サプライヤー調査や監査による調達品の品質確保
労働力の不足に関わるリスク
  • 少子高齢化による国内労働人口の減少、採用競争の激化を背景とした、製造拠点における労働不足
  • 定年延長や働き方改革の実施、多様で柔軟な働き方を可能にする制度の整備・充実化等を通じた、社員が意欲を持って仕事に取り組める環境の整備
  • デジタル技術の活用による、全社的な事業の効率化・省力化
  • 人材育成制度の充実化による社員一人ひとりの能力の向上
法的規制に関わるリスク
  • 国内外の環境・リサイクル関連法、独占禁止法等の法的規制について、現在予測し得ない法的規制が設けられる
  • 国内外における法的手続きによる権利の保全
ハザードリスク 情報セキュリティに関わるリスク
  • 保有する機密情報や個人情報の漏洩、改ざん、破壊等が発生し、信用の失墜、損害賠償の請求等に至る
  • 秘密保持契約の締結や情報関連規則の遵守
  • マルウェア対策および多要素認証等の情報セキュリティ対策システムの導入・運用
  • 従業員教育の強化

取り組み

事業継続計画(BCP)

当社では、大規模地震に加え、近年増加している台風、集中豪雨などの自然災害、また、感染症のパンデミックに対応する事業継続計画(BCP)を地域・事業所別に策定し、非常時における事業活動継続のためにリスクを回避する取り組みを行っています。また、首都直下地震等の大規模災害時を想定したシナリオ計画に基づく訓練を定期的に行い、組織としての危機対応への備えをしています。B to Bビジネスを主とする当社グループにとって、サプライチェーンの途絶は納入先であるお客様の生産・販売へ与える影響が大きいため、主要なお取引先にはCSR調達を通じて災害発生時の速やかな事業復旧・継続に関するBCPの策定状況を確認しています。2023年度は、外部の専門家により、国内すべての生産拠点で地震、津波、風水害、土砂崩れなどの幅広い自然災害を想定した立地リスクの調査を実施し、結果に基づき各拠点のBCPの見直しを進めています。

情報セキュリティの強化

当社グループは、情報セキュリティの強化を重要な経営課題の一つと位置づけ、経営主導のもと、ソフト・ハードの両面から情報セキュリティリスクに対応しています。2021年度には、サイバーセキュリティに関連するインシデントが発生した際に対応する専門チームを整備し、運用を開始しました。2022年度は当社グループ各拠点で使用しているコンピュータのセキュリティ状況を一元的に監視することができるセキュリティシステムに移行しました。また、研修・勉強会等を通じて従業員のセキュリティ意識を高めるなど、組織的なセキュリティリテラシー向上にも取り組んでいます。