当社は、事業を通じてサステナビリティ活動を推進するにあたり、労働安全衛生を最も重要なテーマの一つと考え、「安全はすべてに優先する」という基本理念に基づき、国内外の全事業所においてリスクマネジメント計画書を策定し、年間計画に基づいた安全活動を展開しています。DOWAグループの安全衛生活動は、協力会社・請負業者を含む関係するすべての労働者を対象としています。
当社グループの安全管理活動は、HD環境・安全担当取締役を責任者として、HD環境・安全部と各事業会社で選任された安全環境責任者/担当者が連携して行っています。また、衛生管理や健康経営活動はHD人事担当取締役を責任者とし、グループ各社の人事担当部門・安全担当部門・産業医および健康保険組合における推進体制を整備・構築しながらグループ全体で推進しています。サステナビリティ委員会において、労働安全衛生に関するグループ横断的な議論を行い、サステナビリティ委員会で重要と採択された事項は、サステナビリティ委員会の上位にあるサステナビリティ推進会議に報告され、さらに重要な事項は取締役会に報告されます。取締役会は安全や健康に関する監督を行います。
安全環境責任者/担当者会議は環境・安全部と各事業会社および技術サポート会社の安全環境責任者ならびに担当者が集まり、全社安全活動の推進についての討議や、各社の活動内容の共有、相互支援を行う場としています。また、中期計画の施策の展開に向けた協議や方向性の共有を年に2回程度行っています。事故や災害が発生した場合、事実確認や原因究明、応急および恒久対策についての議論を行い、フィードバックしています。本会議で決定した内容や対策などは、安全環境担当者から各事業子会社へ展開し、迅速な情報共有を図る仕組みを構築しています。
各地区の安全活動メンバーがお互いの活動事例やアイデアを共有し、相談し合える交流の場として設けています。異なる分野間での協力・連携を行うことで、安全活動レベルの底上げを図っています。
主な施策 | 指標 | 目標 |
---|---|---|
マネジメントシステムの確立 | EHS-MS運用事業所率 | 100% (2024年度末) |
事故・労働災害の再発防止 | 度数率 (派遣を含み請負を含まない) |
0.7 (2024年度) |
強度率 (派遣を含み請負を含まない) |
0.01 (2024年度) |
|
健康経営®の推進 | 定期健診受診率 | 100% (グループ全体) |
環境マネジメントシステム(ISO14001)と労働安全衛生マネジメントシステム(ISO45001)を統合したものをEHS-MSと定め、ISO規格に準拠した運用を目指しています。「中期計画2024」では、すべての事業所でEHS-MS(環境・安全衛生マネジメントシステム)の構築・運用が行われ、グループ全体として、環境(E)安全衛生(HS)に関する内部統制がとれている状態とすることを目標に掲げています。目標の達成に向けて、環境と安全衛生の2つのマネジメントシステムを活用しながら、それぞれの管理水準を向上させ、事故や災害の防止に努めていきます。また、リスクマネジメントに立脚した労働安全衛生マネジメントシステムが運用・維持・改善されている姿の実現に向けて、2022年度にISO規格に沿った構成としながらHDと事業会社間の役割・責任・権限を明確にした「EHS-MSマニュアル」を作成しました。既に本マニュアルを運用している先行事業所の事例を参考にしながら、グループ全体へ展開しています。
当社グループ全体の災害件数は長期的に見ると減少傾向にありますが、2023年2月に重大な労働災害が発生したことから、厚生労働省災害統計における同規模の事業所の数値との比較において、度数率は1.25に対して1.19、強度率については0.08に対して0.87と、強度率が災害統計における同規模の事業所の数値よりも高い値となりました。今後も安全のための諸施策を確実に実施し、安全管理体制の強化に取り組んでいきます。
2022年度は82件(82名り災)不休災害と22件(24名り災)の休業災害(死亡含む)が発生しました。災害が発生するたびに労働災害報告基準に従って災害発生の要因分析と再発防止対策の実施を行っています。11件(13名り災)の休業災害(死亡含む)は「化学設備」、「動力運搬機」等に起因しており、設備の不備、作業手順の不備や不順守によるものでした。そのため、「設備改善」と「リスクアセスメント」で再発防止を講じています。
重大事故が発生した事業所、労働災害頻度の高い事業所をそれぞれ「指定事業所」「準指定事業所」として指定し、改善を強く支援する独自の制度を設けています。HDと全事業会社の安全担当者で構成される安全環境責任者/担当者会議は、「指定事業所」「準指定事業所」に対して安全体制の改善を支援・指導しています。多様な視点に基づく議論を重ね、自社の課題に対応することによりグループ全体の安全レベルの向上を図っています。
指定事業所 |
|
---|---|
準指定事業所 |
|
重大インシデント発生事業所への査察 |
|
安全環境担当者会議は、労働災害頻度の高い事業所に対して安全体制の改善を支援・指導しています。外部コンサルタントによる客観的な視点を取り入れつつ安全監査や安全衛生診断を実施し、改善を推進し、安全レベルの向上を図っています。
当社グループの各生産拠点において安全衛生に関する教育を行っています。そのため、HDはグループ全体に共通する安全衛生に関する知識・知見や理解を促すための教育を行っています。2022年度は、環境・安全衛生マネジメントシステム(EHS-MS)の構築・運用に関するグループ方針に従い、EHS-MSの理解促進に向けたeラーニングを実施し、当社グループが目指すマネジメントシステムへの理解・浸透に取り組みました。また、リスクアセスメントアセッサー研修やOHS遵法評価者研修、OHS理解向上セミナー、コンプライアンスセミナー等の教育を実施し、延べ412名が受講しました。
DOWAグループでは、未然防止策としてリスクアセスメント活動の強化を図っており、既存事業および新規事業の安全性のリスク評価を実施しています。また、新規事業について安全に関する新規事業安全監査を行っており、建設工事の構想検討、基本設計、詳細設計の各段階における標準ルールである「DOWA生産技術標準(DTMS)」を策定し、2019年度より運用を開始しています。必要な体制の整備状況や事前に想定できる環境保全面・労働安全衛生面のリスク潰し込み、残留リスクの把握と対策についてチェック表に基づいて評価を行い、確認・指導しています。
当社グループでは、リスクアセスメントの取り組みをグループ全社をあげて長年実施していますが、さらにより良いリスクアセスメントを実施するため「リスクアセスメントガイドライン」を制定しました。同ガイドラインにおいては、経営者の責任を明確にするとともに、危険源を起点とするリスクアセスメントを行うための重点ポイントを設定しました。
●リスクアセスメントガイドラインの見直し重点ポイント
1 | リスクアセスメント実施を必須とする計画の判断基準 |
---|---|
2 | 経営者の責務 |
3 | リスクアセスメント運用チェック機能 |
4 | 危険源の特定と認識 |
5 | 残留リスクの管理 |
グループ各社の優れた取り組みの共有と、人的交流を通じた各社の安全に関する取り組みのレベルアップを目的として「DOWAグループリスクアセスメント発表会」を2011年より毎年開催しています。2022年度は、応募総数78件の中から事前審査により選抜された優れた取り組み7事例の発表・表彰を行い、各社の取り組みについて活発な議論が交わされました。
第12回リスクアセスメント発表会の様子
当社は、「健康経営宣言」を策定し、各種健康施策を推進しています。
●健康経営宣言
私たちDOWAグループは、グループで働くすべての人およびその家族の健康維持・増進に取り組み、心身ともに活き活きと働ける職場を築いていきます。
●健康維持・増進に向けた取り組み
※「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
当社グループでは、従業員やその家族の健康管理について、婦人科検診や家族検診の受診、予防接種への費用補助など、法定以上の対応を行っています。また専門カウンセラー(臨床心理士)による電話や面談の相談を受けられる専門ダイヤルを設置しています。
さらに、グローバルな感染症(肺結核、HIV/エイズ、マラリアを含む)による健康課題を重く受け止め、当社グループもこれらに対して、積極的に対応しています。これらの世界的な健康課題について、海外赴任者に対し感染予防の啓蒙を図るなど、社員に対する注意喚起を促しています。特に結核については、早期発見のため、胸部X線(レントゲン)検査を含む定期健康診断を行っています。
当社グループおよび当社グループ会社は、経済産業省と日本健康会議が選定する「健康経営優良法人認定制度」において、「健康経営優良法人(大規模法人部門)」または「健康経営優良法人(中小法人部門)」に認定されています。