ESGライブラリ

資源循環

基本的な考え方

DOWAグループは、天然資源の消費を抑制するとともに、使用済みの資源の循環的利用を進め、持続可能な社会の実現に貢献してきました。一方で、資源循環型社会を追求するスピードは地球規模で加速しており、リサイクルニーズはさらに拡大しています。また、サーキュラーエコノミーやカーボンニュートラル社会の実現には、グローバルな資源循環が不可欠であり、今後、リサイクルされた金属の価値が向上していくことも期待できます。このような環境から、当社グループは、生産する金属に占めるリサイクル原料由来比率の向上を目指すなど、資源循環型社会の構築に向けて、金属リサイクルのさらなる強化を推進しています。

基本的な考え方
DOWAの事業とSDGs

SDGs 12:つくる責任・つかう責任金属資源を利用することで成り立っている当社の事業にとって、SDGsの目標「12.持続可能な消費と生産のパターンを確保する」は、最も影響があり、かつその貢献において大きな力を発揮することができる領域と考えます。企業理念に示す通り、「資源循環型社会の構築」に 当社の技術やリソースを通じて取り組んでいくことで、目標12の達成を目指します。

目標と実績

主な施策 指標 目標
リサイクル原料の集荷拡大 小坂製錬向けリサイクル原料の集荷量
(2021年度=100)
110
(2024年度)
使用済み排ガス浄化触媒の集荷量
(2021年度=100)
140
(2024年度)
LIBリサイクル処理量
(2021年度=100)
400
(2024年度)
リサイクル原料由来比率の向上 生産する金属に占めるリサイクル原料由来比率
(製錬部門の売上高ベース)※
70%
(2024年度)

※本項目の「リサイクル原料」には、小坂製錬向けリサイクル原料以外の2次製錬原料等を含みます。

金属を軸とする循環型ビジネスモデル

当社グループは、金属の生産から高付加価値製品の製造、廃棄物処理・金属リサイクルに至る5つの事業を組み合わせた独自の循環型ビジネスモデルを展開しています。「環境・リサイクル部門」では廃棄物を無害化し、使用済み製品などから金属を選別・回収し、製錬原料として活用します。「製錬部門」では天然資源である鉱石に加え、多様なリサイクル原料から有用な金属を取り出します。それらの金属は、「電子材料部門」「金属加工部門」「熱処理部門」によって、高純度化処理やめっき処理、表面処理などの様々な加工により、機能という付加価値を与えられた材料となり、自動車や電子機器といった最終製品に組み込まれます。製造者から消費者の手に渡った製品は、やがて使用済みとなり、再び「環境・リサイクル部門」によって金属を回収するといった資源循環ネットワークを実現しています。

金属を軸とする循環型ビジネスモデル

金属リサイクルの強化

リサイクル製錬所である小坂製錬を中心とする、環境ビジネスとリサイクル製錬を組み合わせた独自のビジネスモデルをより一層、強化していきます。リサイクル原料の集荷拡大や各工場での設備増強、回収する金属の種類拡大を進めるなど、環境・リサイクル部門と製錬部門の協働により、リサイクル原料由来の金属比率の向上を図ります。

金属リサイクルの強化
環境・リサイクル部門と製錬部門の融合

資源循環のさらなる強化に向けては、環境・リサイクル部門と製錬部門の融合が不可欠となります。そのために環境・リサイクル部門における前処理機能の強化によってリサイクル原料の集荷拡大・増処理を図るとともに、製錬部門での設備増強によって設備効率を向上させ、より多くの金属の回収を目指します。

3つの資源循環ループ

DOWAグループでは、自社の製造工程、他社の製造工程、そして社会から発生する廃棄物まで3つのループを通じて、限りある資源の有効活用に取り組んでいます。同時に資源循環における社会的責任として、適切な水処理、廃棄物の無害化、確実な最終処分など、リサイクルのあらゆる段階で環境負荷の最小化に努めるとともに、処理工程で発生する熱を蒸気や電力として活用するなど、環境保全と省エネルギーに配慮した持続可能な資源循環を目指しています。

  1. 自社内発生・自社利用で、当社の製錬や金属加工などの「製造事業」で発生した廃棄物を「環境事業」「製錬事業」でリサイクルしています。金属素材として販売するほか、当社の原料として再利用を行っています。
  2. 他社の製造工場の工程から発生する金属くずなどを受け入れて行うリサイクルです。当社の素材や部品を納める顧客工場からの場合は、受け入れた廃棄物を原料として再び活かすなど、新たな資源投入量の削減に繋がっています。
  3. 使用済みの最終製品のリサイクルです。家電リサイクルや自動車リサイクル、小型家電リサイクルなどを通じ、社会から幅広く回収された使用済み製品は、金属素材として再び社会に還元されます。

また、当社でリサイクルできない紙、鉄、アルミなどについては、他社のリサイクル工程を通して適切に資源化されるよう努めています。

資源循環の3つのループ

持続可能な資源利用に向けた取り組み

資源の有効利用においてリサイクルは一つの解決策ですが、金属を効率的に回収する技術に加え、その過程で発生する有害物や非有害物を安全に処理するための技術とインフラも必要です。同時に、効率的にリサイクル原料を集荷する社会システムの構築、多種多様な原料を処理する手間やコストなど、リサイクルにも解決すべき技術的・経済的な課題が存在します。当社は、資源循環における様々な課題と向き合いながら、持続可能な金属資源の利用に取り組んでいます。

持続可能な資源利用に向けた取り組み
リチウムイオン電池のリサイクル

リチウムイオン電池は、携帯電話から電気自動車(EV)まで、幅広い用途で使用され、需要が拡大しています。一方で、廃棄・解体時には感電や発火の危険性があることと、使用済みリチウムイオン電池から回収できる金属の価値が市場価格に左右されることなどから継続的・安定的な処理方法が未確立であり、将来の大量発生期に備えた安全で効率的なリサイクル体制の整備が望まれています。

環境・リサイクル部門では、2019年より秋田県大館市において月間約100トンの処理能力を有するリチウムイオン電池の再資源化ラインを稼働しており、熱処理による無害化後の電池を鉄、アルミ、銅、コバルト・ニッケル混合物などに分離して、効率よくそれぞれの金属原料として再資源化しています。2021年には既存炉を活用する許認可を新たに受け、最大受入能力を6倍に拡大させました。これにより大型の車載用リチウムイオン電池も解体せず安全に処理できるため、さらに高効率なリサイクルが可能になりました。

リチウムイオン電池のリサイクル

資源循環におけるバリューチェーンの最適化

DOWAグループでは、貴金属、家電、自動車、使用済み小型家電など幅広いリサイクル事業を展開しています。単一のリサイクルを断片的なチェーンで行うのではなく、設備の技術的特性や拠点の地理的状況などを踏まえて計画的に処理を行うことで資源効率性を高めています。また、運輸、分析、研究所などの部門とも連携して、資源の有効活用に向けて取り組みを進めています。さらに、必要に応じて異なるセクターや社外パートナーとも連携し、バリューチェーンの最適化に取り組んでいます。例えば、当社は鉄鋼メーカーと協業し、鉄鋼ダスト(亜鉛二次原料)から金属回収を行い、二次原料による亜鉛の再資源化を推進しています。

また、当社のビジネスモデルの大きな特徴は、リサイクルだけでなく廃棄物処理事業を行っていることにあります。当社は長年リサイクル技術の向上に努め、金属のさらなる再資源化に取り組んでいますが、現実には再使用も再生利用もできない廃棄物も存在します。そのような廃棄物を適切に処理・管理する施設をグループ内に保有することで、資源効率性の向上と環境保全や安全性を両立させたバリューチェーンの一端を担っています。

国際資源循環の推進

世界全体で資源の持続的利用を進めていくためには、環境負荷の低減と資源効率の最大化を図り、国境を越えて連携することも必要とされます。当社は、独自のリサイクル技術やインフラ、知識、経験、人材などのリソースを活用し、日本だけでなく、中国、シンガポール、タイ、インドネシア、ミャンマーにおいても、金属リサイクルや廃棄物処理事業を展開しています。また、リサイクル原料の主要な発生地である北米や欧州において、営業拠点やサンプリング拠点を活用しながら集荷を行い、国内の製錬所でレアメタルの回収を行うなど、環境保全と両立するグローバルな資源循環システムの構築を進めています。

廃棄物適正処理の推進

当社は長年リサイクル技術の向上に努め、金属の再資源化を通して循環型社会の構築に取り組んでいます。しかし、現実には、再使用も再生利用もできない廃棄物も存在します。廃棄物の焼却施設や最終処分場は敬遠されがちですが、設置できなくなれば廃棄物の行き先は無くなり、公衆衛生は保障されないことになります。技術的に安全な施設を整備し、適切な維持管理を行い、住民とのコミュニケーションを十分に行う廃棄物処理事業は、社会にとって重要な役割を担っていると考えています。
最終処分場は資源循環を土台で支える施設です。DOWAグループは、廃棄物の処理技術を高め、安全・安心を保証する信頼性を兼ね備えた、社会に必要とされる最終処分場の整備を続けています。

外部団体での取り組み

サーキュラーエコノミーに関する産官学のパートナーシップ

DOWAグループは、経済産業省の「成長志向型の資源自律経済戦略」を踏まえ、循環経済(サーキュラーエコノミー)の実現のために立ち上げた「サーキュラーエコノミーに関する産官学のパートナーシップ」に参画しています。当パートナーシップは、国、自治体、大学、企業・業界団体などのサーキュラーエコノミーに積極的に取り組む組織の有機的な連携を図り、サーキュラーエコノミーの実現に必要となる施策についての検討を実施します。当社はこの活動を通して、パートナーとの協業をし、循環型社会の実現に寄与します。