DOWA CSR報告書2017

編集方針

特集1持続可能な鉱山開発

DOWAグループは、環境や社会に配慮した鉱山開発を通して、亜鉛をはじめとする
非鉄金属資源を社会に安定的に提供し、豊かな暮らしを支えています。

金属供給を通じて豊かな社会を実現するために

 DOWAグループは金属を安定供給することで、その先にある金属を使用した製品やサービスによる豊かな社会の実現に貢献できると考えています。当社の製錬部門の強みは、秋田製錬・小坂製錬、および自動車の廃触媒からプラチナなどを回収する日本ピージーエムの連携による、「製錬・リサイクル複合コンビナート」の仕組みにあります。複数の製錬拠点が中間物のやりとりを通じて連携し、各拠点の固有技術を活かすことで、単独では回収できない約20種類の元素を効率良く回収しています。

元素回収技術

 自動車や電気製品などの日本のものづくりには金属が欠かせませんが、現在、国内に稼働中の金属鉱山はほとんどなく、その多くを輸入に依存しています。当社では、社会が必要とする金属素材の質と量を確保するため、鉱山から生産される精鉱とリサイクル原料という二つの原料から製錬を行っています。枯渇資源である金属の持続可能な利用にリサイクルは欠かせません。一方で、金属製品の利用期間は長くすぐには回収できません。また、一定品質のリサイクル原料を大量にかつ安定して集荷する社会システムが整っていないため、リサイクルだけでは伸び続ける世界の需要を賄うことはできません。DOWAグループでは、国内外でリサイクル原料の集荷を行うとともに、海外での鉱山開発にも積極的に取り組んでいます。

金属原料の長期安定確保のために

 鉱山開発は、鉱床を発見してから実際に生産するまでの期間が長く、通常、埋蔵量の調査に10年以上、鉱石を掘り・金属原料を生産する操業に必要な設備の建設まで、さらに2~3年が必要とされます。この期間に多額の開発費用が必要とされるほかに、金属価格・為替などの外部環境が大きく変化するリスクもあります。当社では、このようなリスクを少しでも緩和するために、初期探鉱が完了している案件に対して事前に選鉱試験を実施して、将来生産される精鉱の品質が、当社の製錬コンビナートに適切な原料かどうかを確認してからプロジェクトを進めています。

プロジェクト選定の基準

  • 長期安定確保のため複数の鉱山を開発
  • 政治的、経済的リスクの低い国や地域を選択
  • 鉱山・製錬・リサイクル複合コンビナートに適した原料
  • 当社基準を満たすIRR(Internal Rate of Return:内部収益率)

トピックス

ロス・ガトス プロジェクト

 亜鉛は、自動車や家電、建材の防食用めっきや、船や橋の耐食プロジェクトの概要地域と調和した持続可能な鉱山開発用部品などの幅広い用途で使用されています。当社は経済発展等に伴う世界的な金属需要の拡大を背景に、暮らしに欠かせない資源である亜鉛の長期安定的な確保のため、鉱山開発に取り組んでいます。
 DOWAメタルマインは、米国のサンシャイン・シルバー・マイニング&リファイニング社(SSMRC)と共同で、メキシコ合衆国に保有するロス・ガトス鉱山で、銀・亜鉛・鉛を採掘するプロジェクトを進めています。

ロス・ガトス鉱山の坑口写真 ロス・ガトス鉱山の坑口

プロジェクトの概要

 ロス・ガトス プロジェクトは2019年7月に操業開始予定の鉱山です。2020年には本格操業に移行し、年間を通して亜鉛原料を生産することができるようになります。当社の権益は30%ですが、亜鉛原料については全量を買い取る権利を有しており、毎年約5万トンの亜鉛原料(亜鉛約57%、銀500g/t)を、12年間供給することが見込まれています。これにより、同じくメキシコにおいて権益を保有しているティサパ亜鉛鉱山と合わせて、自山鉱比率(出資する鉱山から調達する原料の比率)は現在の20%からほぼ倍増する見込みで、亜鉛原料の安定供給に大きく貢献します。さらに、ロス・ガトスの亜鉛原料には、高い水準で銀が含まれているため、当社の製錬・リサイクル複合コンビナートの強みを活かして回収することが可能です。

鉱山位置 メキシコ合衆国チワワ州
生産方式 坑内掘り
資本構成 DOWA 30%、SSMRC社 70%
可採鉱量 9.8百万トン
銀品位 247g/トン、
亜鉛品位 4.8%、
鉛品位 2.3%
精鉱生産量 亜鉛精鉱 約50千トン/年、
鉛精鉱 約30千トン/年
操業期間 2019年7月から約12年間

地域と調和した持続可能な鉱山開発

 鉱山は、生態系や水などの自然環境や地域社会に大きな影響を及ぼし得ることから、環境や社会に配慮した開発を行うことは事業者の責務です。本プロジェクトの実施に当っては、開発活動全般に伴う環境・社会影響に関する調査を行った上で、影響を回避もしくは軽減するための作業管理・実施計画を策定した「予防報告書」を行政機関へ提出することで開発活動認可を取得しています。また、定期的に植物、動物、水、大気などの環境に関するさまざまなモニタリング調査を実施し、環境保全に努めています。自然環境だけでなく、鉱山で働く労働者については、作業環境に応じた安全教育・訓練の実施や、国際基準(IFCパフォーマンススタンダード等)に基づく労働条件への配慮が実施されていることを確認しています。長期間コミュニティと関わる鉱山では、地域に根ざした持続可能な運営が欠かせません。ロス・ガトス鉱山の本格操業はこれからですが、1994年より操業を行っているティサパ鉱山では、植樹などの環境保全活動や病院・ジムの設置など、地域貢献の取り組みを継続的に行っています。

鉱山と地域に関する写真

VOICE

ロス・ガトスプロジェクトは2017年1月、フィージビリティースタディーを完成させるとともに、各種環境・社会影響調査に基づく「予防報告書」を関係諸官庁・機関に提出しました。同年10月に鉱山開発の認可を取得し、建設工事に着手しました。請負業者を含め最大1,000人を超える作業員がそれぞれの建設現場で作業しており、作業員の安全・健康を守るべく安全教育・訓練を実施しています。また、近隣の村々では交流活動を通してコミュニティーの鉱山操業への理解・協力を得られるように持続的な取り組みを行っています。

DOWAメタルマイン(株)
資源・原料部長 工藤 英雄

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